カトリックの世界には「黙想」「観想」、またその二つをひっくるめての「念祷」などの言葉がある。
そのそれぞれを英語で言えば次のようになるようだ。
黙想:meditation
観想:contemplation
念祷:mental prayer
(ジョン・ハードン神父様編の『カトリック小事典』参照)
そして、それらについてはしばしば、なかなか難しい解説がされている。特に、アヴィラの聖テレジアによる「高い観想」についての解説など、私には歯が立たない。降参だ ヽ(T_T)ノ
しかし最近、別の英単語が私の目に入った。
それは、アメリカの御受難会の古い会報を眺めていた時なのだが。
Holy Cross Province(聖十字架管区)の1948年1月25日発行の会報の中の或る記事の表題部分。右上の小さな文字列を含めて表題が構成されている。読んでみると──
Recollection enables us to make 24 Hours' Prayer A Day
(Recollection が私たちに一日24時間祈ることを可能にする)
仕事を持っている者が「一日24時間祈る」ことが可能かどうかはひとまず措いて、とにかく「recollection」という言葉が私の目にとまったのである。
英語に詳しい人たちには十分馴染みの、ごくありふれた単語だろうから、今回のこの記事は何となく恥ずかしいのだけれども・・・
*
recollection【名詞】
1 |
回想, 追憶 ; 記憶(力) |
---|---|
2 |
((しばしば recollections)) 思い出されること, 思い出 |
3 |
黙想, (特に宗教的な) 瞑想, 観想. |
このように、この言葉は一般用語であると同時に宗教的な用語でもあるようだ。実際、カトリックの各種事典も取り上げている。
Catholic Culture、Catholic Online、New Advent
この言葉は、日本のキリスト教界では「黙想」と訳されることが多いようだ。しかし私は、それよりも、「re-」という接頭辞と「collection」という言葉から成るこの言葉の持つ素朴なイメージの方に惹かれた。それは「再び集める」という意味である。
re「元へ、再び、何度も何度も、後ろへ」 |
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recollect 【他動詞】
【自動詞】 回想する, 記憶がある ; 思いつく, 思い出す. 【語法】 RECOLLECT は意識的努力を含意するから I don't recollect というよりも I cannot recollect というほうが普通. この点 remember とはちょうど反対である. 【語源】 中世ラテン語 recollēctus〔recolligere「思い出す, 回想する」(ラテン語「もう一度集めてまとめる」) の過去分詞 |
つまりこの言葉は、その最も素朴な意味合いに於いて、私たちが、自分が既に知っている事を、つまりイエズス様やマリア様について既に知っている事を、心の中で「再び集める」という意味である。まあ、普通に言えば、「想起」「回想」すること。
──であるならば、これのどこが難しい?
*
「黙想」や「観想」、またその二つをひっくるめた「念祷」についての難しい解説も結構だ。そういうものも、高度に進んだ人たちには必要なのだろう。しかし、私としては、それら全ての土台たる、最も素朴な意味での「re-collection」、「記憶を再び集める」、「記憶を何度も集める」ということで満足する。
その素朴な例は、前回紹介した本が示している。
次のような箇所が私の印象に残っている。
18. あなたが食事を取ろうとする時、十字架上のイエズス様はその御苦悶の最後の間、彼の渇きを緩める一滴の水も取れなかったことを思い出してください。何の祈りもなしに食事の席につくことのないようにしてください。
往々「グルメ」な現代人は、「楽しい食事の前にそんなことを考えさせられては、食事が喉を通らなくなる」と言うかも知れないけれども。
23. 〔就寝時〕横たわる時、イエズス様は十字架の固いベッドの上で体を伸ばされ、鋭い釘によってそこに釘付けられたことを思ってください。そして彼にこう言ってください:「ああ、わが甘美なるイエズス様、あなたは十字架の上に釘付けられ、言語に絶する拷問を加えられたのに、私はと云えば、このベッドに横たわっています!… 」
このような「想起」は、ごく素朴なものであるから、私たちはこれを「難しい」と言うことはできない。
「日本人には不向きなもの」と言うこともできない。
この単純素朴さのゆえに、そんなこと、言えるわけがない。
「27. 諸教会に潜入し、啓示された宗教を『社会的』な宗教と入れ替えよ」 - 共産主義の目標
「罪の概念は中世の哲学が聖書の内容を悲観的に解釈したものである、という考えを徐々に刷り込むことによって」 - フリーメイソンの雑誌