構成
「エルサレムの聖キュリロスのカテケージス」は 24個 の教話から成る。否、本当は、ここには authorship の問題、つまり「真の原著者・原話者」の問題があるから、私は「24個」と言ってしまうことに抵抗があるけれども、とにかく一般にはそう思われているのである。
「ミスタゴギア」とはギリシャ語で、「秘義教話」を意味するらしい。
今度はマイケル・デイヴィス氏の文章で見てみよう。
『典礼革命』シリーズ第三巻『パウロ六世の新しいミサ』
Liturgical Revolution, Vol. 3: Pope Paul's New Mass
1980年
手で受ける聖体拝領
Communion in the Hand
マイケル・デイヴィス
Michael Davies
(…)
聖キリロはエルサレムの司教で、主に彼の講義シリーズ(カテケシス)によって知られています。それは(おそらく三五〇年の)復活祭に受洗する求道者たちを対象とするものだったのでしょう。導入の講義とそれに続く十八の講義は古典的神学書であり、カトリック信仰主要点の際だって明白かつ説得力に富む提示を含みます。これらの講義集を私たちの時代にまで伝えた文書のいくつかには、そのほか五つの講義が含まれています。それは聖週間に同じ聴衆が聞いたと推定されるもので、洗礼、堅信、聖体、つまりあの偉大な秘跡の神秘への入門でした。ここから、これらの五講義は秘跡のカテケシスと呼ばれます。
「導入の講義」と「十八の講義」と「五つの講義(秘跡のカテケシス)」で、やはり合計 24個 の講義である。
デイヴィス氏の言う「そのほか五つの講義(秘跡のカテケシス)」というのが、初めの本の言う「五つのミスタゴギア」に当たる。
ここで、聖キュリロスの日本でのいろいろな呼び名と同じように、読者が混乱しないように整理しておきたい。
問題となっている「最後の五つの教話」もいろいろに呼ばれる。「秘義教話」「秘跡のカテケージス」「ミスタゴギア」、英語では「Mystagogical Catechesis」「Lecture on the Mysteries」など。これ皆すべて同じものを指す。
*
さて、「エルサレムの聖キュリロスのカテケージス」の全体の構成と、前回見た「聖体拝領のキュリロス方式」がその中の何処で言われているかを見よう。
カトリック・サイト New Advent が「エルサレムの聖キュリロスのカテケージス」の全部をアップしている。その目次は次の如くである。
ちなみに、New Advent がアップしているこれは、聖公会司祭 Edwin Hamilton Gifford(1820–1905)による英訳(amazon)のようだ。
Catechetical Lectures (Cyril of Jerusalem)
Procatechesis |
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To those who are to be Enlightened, delivered extempore at Jerusalem, as an Introductory Lecture to those who had come forward for Baptism |
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On Repentance and Remission of Sins, and Concerning the Adversary. |
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On Baptism. |
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On the Ten Points of Doctrine. |
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Of Faith. |
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Concerning the Unity of God. On the Article, I Believe in One God. Also Concerning Heresies. |
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The Father. |
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Almighty. |
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On the Words, Maker of Heaven and Earth, and of All Things Visible and Invisible. |
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On the Clause, and in One Lord Jesus Christ, with a Reading from the First Epistle to the Corinthians |
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On the Words, the Only-Begotten Son of God, Begotten of the Father Very God Before All Ages, by Whom All Things Were Made. |
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On the words Incarnate, and Made Man. |
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On the words, Crucified and Buried. |
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On the Words, And Rose Again from the Dead on the Third Day, and Ascended into the Heavens, and Sat on the Right Hand of the Father. |
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On the Clause, And Shall Come in Glory to Judge the Quick and the Dead; Of Whose Kingdom There Shall Be No End. |
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On the Article, And in One Holy Ghost, the Comforter, Which Spoke in the Prophets. |
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Continuation of the Discourse on the Holy Ghost. |
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On the Words, And in One Holy Catholic Church, and in the Resurrection of the Flesh, and the Life Everlasting. |
First Lecture on the Mysteries. |
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(On the Mysteries. II.) |
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(On the Mysteries. III.) |
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(On the Mysteries. IV.) |
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(On the Mysteries. V.) |
最初の Prologue(Procatechesis,プロカテケーシス)を含めて 全24個 の教話である。
上の赤枠は私が付した。その最後の五つの教話が「秘義教話」である。問題の箇所、「聖体拝領のキュリロス方式」は、最後の最後、上で言えば Lecture 23 にある。更に言えば、Lecture 23 の中でもほとんど最後にある(全23節のうちの21節と22節)。
ところで、New Advent は上のように、Lecture 1 から Lecture 23 まで番号を通して表示している。しかし、Lecture 18 までと「秘義教話」を分けて、次のように表示した方がいいだろう。
Catechetical Lectures (Cyril of Jerusalem)
Procatechesis |
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To those who are to be Enlightened, … |
|
On Repentance and Remission of Sins, … |
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・ |
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Continuation of the Discourse on the Holy Ghost. |
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On the Words, And in One Holy Catholic Church, and in the Resurrection of the Flesh, and the Life Everlasting. |
こうした方がいい理由は . . . まあ、追々感じて頂く。
「エルサレムの聖キュリロスのカテケージス」の全体を眺めることのできるもう一つの資料は、明治期に出された正教会の訳書である。
イェルサリムの大主教聖キリル全書
啓蒙説教
啓蒙説教序
一 |
イェルサリムに於て即席講演したるものにして、洗礼に進む者に対する劈頭の教訓。 |
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二 |
イェルサリムに於て即席講演したる、悔改と罪の赦の事。 |
三 |
イェルサリムニ於テ即席講演したる、洗礼の事。 |
四 |
イェルサリムに於て即席講演したる、定理十箇条の事。 |
五 |
イェルサリムに於て即席講演したる、信仰の事。 |
六 |
イェルサリムに於て即席講演したる、「一つの神を信ず」といふ言につきての説教、神の独裁の事及び諸異端の事。 |
七 |
イェルサリムに於て即席講演したる、「神父を」といふ言につきての説教。 |
八 |
イェルサリムに於て即席講演したる、「全能者」といふ言につきての説教。 |
九 |
イェルサリムに於て即席講演したる、『天と地及び凡の見ゆると見えざる者の造成者を』といふ言につきての説教。 |
十 |
イェルサリムに於て即席講演したる、『一の主イイススハリストス』といふ言につきての説教。 |
十一 |
イェルサリムに於て即席講演したる、『神の独生の子、万世の先に父より生れ、万物彼によりて造らる』といふ言につきての説教。 |
十二 |
イェルサリムに於て即席講演したる、『肉身をとりて人となれり』といふ言につきての説教。 |
十三 |
イェルサリムに於て即席講演したる、『釘せられ、及び葬られ』てふ言につきての説教。 |
十四 |
イェルサリムに於て即席講演したる、『第三日に死より復活し、天に昇りて父の右に坐す』といふ言につきての説教。 |
十五 |
イェルサリムに於て即席講演したる、『光栄を顕して、生死者をさばかん為に復来り、彼の国終り無からんを』といふ言につきて、及び「アンティハリスト」の事。 |
十六 |
イェルサリムに於て即席講演したる、『預言者等のいひし聖神、撫恤者を』といふ言につきての説教。 |
十七 |
イェルサリムに於て即席講演したる、聖神のことの教の増補。 |
十八 |
光照を受くる者に対する説教。 |
機密入門
第一、機密入門 新に光照を受けたる者に対する説教。
第二、機密入門 洗礼の事。
第三、機密入門 伝膏の事。
第四、機密入門 ハリストスの体とハリストスの血との事。
第五、機密入門
この目次はこのように、先ほど言ったような分け方をしている。
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しかし、この「秘義教話(機密入門)」には authorship の問題がある。つまり、「本当に聖キュリロスが言ったものか分からない」ようなところがあるのである。次へ
「27. 諸教会に潜入し、啓示された宗教を『社会的』な宗教と入れ替えよ」 - 共産主義の目標
「罪の概念は中世の哲学が聖書の内容を悲観的に解釈したものである、という考えを徐々に刷り込むことによって」 - フリーメイソンの雑誌