佐久間彪神父「和室でのミサ」

ピエール・ジュネル(Pierre Jounel)著 『ミサ  きのう  きょう』
(1988年、ドン・ボスコ社)の「付録  三」

 

和室でのミサ

 (1)

 

佐久間 彪

[たけし]

 最初の教会は信徒の家に集まってミサを行っていた、と使徒言行録には記されています。私たちも、時に、また、しばしば、信徒宅での集会や、比較的少人数での黙想会などで、和室に座ってミサを献げる必要にせまられることがあります。そこで、私のささやかな経験をもとに、具体的な「和室でのミサ」の方法というか仕方というか、とにかくどのようにしたら良いか、ということを、思いつくままに書いてみたいと思います。

(1) 個人宅ですと、たたみの部屋と隣接した、椅子とテーブルの部屋(応接間とか、ダイニング・キッチン等)をつなげて用いることがあるかも知れません。その場合は、すわる部屋の側に司祭の席を、椅子席の方に向かう形で設け、皆が司祭に向かって座るようにすれば、椅子の人々からも視野がひらけて便利です。

(2) 祭壇には、すわり机を用い、白布をかけます。司祭はそれを前にしてすわります。司祭と信徒との距離は極く近いのが好ましいと思います。

(3) 机のかわりに、白布を敷いたお盆を使うのも良いでしょう。ちょうど、お茶の盆だてのように。じかに、たたみの上に聖体器その他を置くのは、私は、どうかと思います。

(4) もし床の間があれば、十宇架、ローソク、また、ホスティア、ぶどう酒、『朗読聖書』などを朗読・奉納等までそこに安置するのも良いでしょう。

(5) 経験では、皆がいっぱいに座ったとき、立って動くのはむずかしく、また、わずらわしいことです。そこで、朗読・奉納をはじめ、何かを司祭席に運ぶ際には、手渡しで順送りにしたらよいでしょう。ただし受け渡しの所作は、きちんとします。もし、動くゆとりがあれば、奉納は、例えばその家の主婦が行うことにしたらどうでしょう。その場合も含め、所作や礼は、日本間に相応しく行い、司祭もまた当然のことながら同様にします。侍者が必要ならば、司祭に一番近くに座っている者が、すわったまま手助けをします。

(6) 長い時間正座することが不得手になって来た今日この頃ですから、ときどき膝をくずすように、司祭の方から声をかけ、また、正座をうながすことも必要です。少なくとも、入祭のあいさつ、祈願、福音朗読、奉献文、聖体拝領など、通常、聖堂での起立に相当する時には、正座すべきだと思いますが、それも、司祭のその折々の判断により、無理を避けるべきでしよう。

(7) 聖体拝領では、司祭が歩いてまわったり、拝領者が前に出てきたりすれば、混乱をきたすことでしょう。それで、例えば、司祭が最寄りの人に聖体をいれた器を「キリストのからだ」と唱えて渡し、その人は「アーメン」と答えて自分で聖体を手にとって頂き、器を次の人に「キリストのからだ」と唱えて渡し、以下一巡させて司祭のもとに戻すようにします。もちろん、この場合、器の受け渡しには、礼儀を(例えばおしいただく)守らなければなりません。この二点は特に留意すべきことだと考えます。ぶどう酒(御血)をまわす場合は(それが望ましいと思いますが)、司祭は聖体器を最初の人に渡した後に杯をその人の方に差しのべ、その人は聖体をとって杯のぶどう酒に浸して拝領し、以下同様に順に聖体器を次の人に渡してから杯を受けとり、司祭がしたように杯を同じ次の人の方に差しのべて浸し易いようにします。以下順にこの所作をくり返して行き、最後に司祭のもとに戻します。

(8) 司祭は司式者または座長として、全体の雰囲気づくりに気をつけるべきでしょう。子供たちは、司祭の所作に興味を示しますから、かえって前の方にすわらせ、司祭は所作の説明や、祈り・聖歌等の意味の分かり易い解説をしたりすることも大切かと思います。奉献文も、その場に応じて選び、さらには新しいものを作ったりすることも必要ではないかと考えます。

(9) ミサの時間の長さについても考慮すべきで、必要に応じて許される限りの省略も考えてよいのではないでしょうか。

(10) 祭服も、和室ミサがひんぱんに行われるならば、そのための特別のものを考えます。例えば、すわって膝がかくれる位の長さで、たたみ易いものを作ります。ストラも短めに、ミサ用具も和室ミサ向きの、例えばお茶道具を参考にしたものを考えたらどうでしょう。

(11) 司祭は出来るだけ膝をくずさないようにしたいものです。そのためには、しびれないよう、ときどきひざまずいたりします。また、最近出まわっている携帯用の「正座椅子」を用いると便利です。経験では、座ぶとんを使わない方がかえって楽なようです。

(12) ミサの後、あいさつを終えてくつろぐ時、そこへの自然な移行が大切です。この場合にも、司祭の座長としての責任は続いています。以後は信徒の、しかるべき人にまかせましょう。

 以上は、私のささやかな経験によるものです。もっと適当な方法があることでしょう。皆で考えていきましょう。

(東京教区司祭)

1 

「日本間で行うミサに関する指針」典礼委員会秘書局69/68号。〔土屋吉正『ミサその意味と歴史』あかし書房 昭和52年、252~255頁に転載。〕

管理人注 上の脚注1は、佐久間神父のこの文章は典礼委員会秘書局が出した「日本間で行うミサに関する指針」と関連する、というほどの意味です。私は確かめましたが、その二つの文章は別物であって、典礼委員会秘書局の「日本間で行うミサに関する指針」には「聖体器を信者間で受け渡す」というような内容は書かれていません。

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