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3.あわれみの神

第16章

この霊魂は、神のいつくしみを知って、キリスト教徒のためだけではなく、全世界のために祈ることについて。

 そこで、この霊魂は、その知識が増大するのを感じ、果てしない喜びに力づけられた。そして、神のあわれみに対して抱いていた希望と、味わっていた言い知れぬ愛とによって、押し上げられるようになって、神の「威光」の前に立った。この霊魂は、神が、人間にあわれみを注ぎたいと願うその愛と望みとにより、人間の敵意にかかわらず、そのしもべたちに、ご自分のいつくしみを強要し、怒りをなだめる方法と道とを与えることをさとった。これによって、この霊魂は喜びに満たされ、世の迫害に対する恐れをことごとく除かれ、神は自分の味方であると確信するようになった。
 この聖い望みの火はますます燃えさかり、神からさずかったもので満足することができなくなった。それで、聖い信頼を抱いて、全世界のためにあわれみを哀願した。たしかに、聖なる教会の改革に関する第二の願いには、すでにキリスト教徒と異教徒との善と利益とが含まれていた。しかし、この霊魂は、神ご自身に鼓吹され、飢えた者のように、その祈りを全世界に広げ、つぎのように叫んだ。
 ──永遠の神よ、あなたは善牧者です。どうぞ、あなたの羊たちをあわれんでください。いそいで世をあわれんでください。このままでは、どうにもならないように思われます。なぜなら、みな、あなたとの間にも、あいたがいの間にも、仁愛による一致を失っているように思われるからです。永遠の「真理」よ、かれらは、もはや、あなたの上にきずかれた愛によって愛し合えなくなっているのです。

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