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3.あわれみの神

第17章

神は人間の悪とくに自愛心をいきどおり、この霊魂に祈りと涙とを求めることについて。

 そこで、神は、わたしたちの救いに対する愛に燃えさかり、この霊魂のなかに、愛と悲しみとの火をますます掻き立てるよう努力された。そして、ご自分がどれほど大きな愛によって人間を創造したかをあらためて示し、つぎのように言われた。
 ──ところで、あなたは、すべての人がわたしに敵対しているのが見えるであろうか。わたしは、熱烈な愛の火をもってかれらを創造し、かれらに恩寵とほとんど無限な多くのたまものとを賦与したではないか。しかも、それを、かれらの側からはなんの功徳もないのに、純然たる恩寵によって実行したではないか。ところが、いとしいむすめよ、見るがよい。かれらは、いかにも重い多様な罪によって、とくに、すべての悪のみなもとであるあのみじめで憎むべき自愛心、かれら自身に対する愛によって、わたしに敵対しているではないか。
 全世界を毒したのはこの自愛心である。それというのも、わたしの愛はそのなかに隣人に関するあらゆる徳を含んでいるが、感覚的な自愛心は、すでに示したように、わたしの愛が仁愛から発するのとはちがい、傲慢から発するのであって、そのなかにあらゆる悪を含んでいるからである。
 かれらは、隣人に対する仁愛から分離され切断されているので、この悪を被造物を介して犯す。かれらはわたしを愛さないから、隣人を愛さない。なぜなら、この二つの愛は、解くことができないほど一つに結びついているからである。それゆえ、わたしはあなたに、すべての善と悪とは隣人を介しておこなわれると言ったのである。これは前に説明した通りである。
 人間は、わたしから善しか受けていないのに、憎しみを返し、あらんかぎりの悪をおこなっているのであるから、わたしは人間に対していきどおりを抱かざるをえない。それゆえ、すでに話したように、わたしの怒りをなだめるためには、わたしのしもべたちの涙が必要である。それで、あらためて言いたい。わたしのしもべであるあなたがたは準備してほしい。そして、あなたがたがその多くの祈り、苦難、願望、わたしに加えられる侮辱とかれらの亡びとに対する悲しみをもって、わたしの前に進み出て、わたしの神的正義の怒りをなだめてほしい。

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