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3.あわれみの神

第19章

この霊魂はますます愛に燃え、血の汗を流したいと望んだことについて。──その霊的父のために、神に特別な祈りをささげたことについて。

 すると、この霊魂は、ますます燃えさかるその望みの火のなかで、酔いしれ、われを忘れたようになって、至福と悲しみとを同時に感じるのであった。神のなかでおこなった一致によって、その喜びといつくしみとを味わい、その慈悲に完全に沈められたようになっていたので、至福であった。しかし、それと同時に、これほど偉大ないつくしみが侮辱されるを見て、悲しみに閉ざされていた。そして、神の「威光」に対して感謝をささげた。なぜなら、神が被造物のみじめさを示されたのは、この霊魂の熱誠をもっと高め、その望みをもっと広げざるを得ないように仕向けるためであることをさとったからである。
 この霊魂は、その感情が永遠の「神性」のなかであらたにされるのを感じ、この愛の聖火がきわめてはげしくなったので、霊魂が肉体に加えた暴力のもとで、水の汗が流れた。なぜなら、この霊魂が神と結んだ一致は霊魂と肉体とのあいだにある一致よりも密接だったからである。この霊魂が感じていた愛の熱情と肉体に加えた暴力とは、肉体に汗を流させた。けれども、霊魂はこの水の汗を軽蔑した。なぜなら、その体から血の汗が流れるのを熱望していたからである。霊魂は自分自身に言った。
 ──ああ、わたしの霊魂よ、おまえはおまえの生命の全期間を浪費した。そのために、おびただしい悪と災いとが、世界と聖なる教会との上に、全体的にも個別的にも襲いかかった。だから、おまえは、血の汗によって、これほどの悲惨をいやすがよい。──
 まことに、この霊魂は、「真理」が述べた教えを立派に心にとどめていた。それは、自分自身に対する神のいつくしみをいつも認識すること、そしてまた、神の怒りと正義とをなだめて、全世界に救いをもたらすために必要なくなり、すなわち謙遜で、絶え間ない聖い祈りをささげなければならないこと、これである。
 すると、この霊魂は、聖い望みにかられて、はるかに高くのぼり、知性の目を開いて、神の仁愛のなかで自分を熟視した。そして、そこで、わたしたちが、霊魂の救いによって、神のみ名の栄光と賛美とをどれほど愛し、求めなければならないかを見、かつ味わった。霊魂は、神のしもべたちはそのために召されていること、および永遠の「真理」は、その霊魂の「父」を召し、選定されたことをさとった。霊魂は、この「父」をいつも神の「いつくしみ」の前に運び、かれがまことにこの「真理」に従うことができるように、かれに恩寵の光明を注いでくださることを祈り求めるのであった。

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