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5.亡びの道

第32章

この木の実は罪と同じようにさまざまであるが、まず肉の罪について。

 死をもたらすこの木の実は、罪と同じようにさまざまである。あるものは動物のえさにしかならない。豚のように、肉的な快楽の泥沼のなかを、精神と体とをあげて、ころげまわる人々の犯す罪がこれである。ああ、動物的な霊魂よ、おまえの尊厳はどこにあるのか。おまえは、天使の妹として造られたのに、野卑な動物になっているではないか。この罪人たちのみじめさはいかにも大きく、純潔そのものである「わたし」がこれに堪えられないばかりか、かれらの友となり、しもべとなった悪魔でさえ、これほどの淫行が犯されるのを見ることができないほどである。
 これほどいまわしい罪はないし、これほど知性の光明を消すものはない。哲学者たちも、かれらが所有していなかった恩寵の光明によってではなく、本性によって与えられた光明によって、この罪が知性を暗くすることを認め、もっとよい研究をおこなうために、貞潔と禁欲とを守ったのである。かれらは、同じょうに、富を放棄した。心が富に占領されるのを避けるためであった。自分の過失によって恩寵を失った無知で、にせのキリスト者はそのようにはしないのである。

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