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9.涙の霊性

第87章

この霊魂は涙の種類とその実とについて教えて下さるよう神に願うことについて。

 そのとき、果てしない望みに苦悩していたこの霊魂は、神との一致によって、また、甘美な第一の「真理」について聞いたこと、味わったことによって、酔わされて立ちあがっていた。自分たちの恩者と神の「仁愛」の情愛とを知らない被造物の盲目を見て、悲しみに打ちひしがれていたけれども、ひとつの望みによって、喜びに満たされていた。もしも神が世にあわれみを注ぐことを望むならば、他のしもべたちといっしょになにをしなければならないかを、神がこの霊魂に教えたとき、神の「真理」からひとつの約束を受けていたのである。それで、この霊魂が一致を保っていた甘美な「真理」にその知性の目をあげ、神がこの霊魂に語った霊魂の諸状態について説明をうかがいたいと願っていた。この霊魂は、涙によってこれらの状態に達することができるとさとっていた。それで、「真理」から、涙の種類について、それがなんであるかについて、どこから発するかについて、教えを受けたいと望んでいた。
 真理は「真理」そのもののなかでしか認識することができないのであるから、この霊魂は「真理」にたずねるのであった。しかし、知性の目によってしか、「真理」のなかになにかを認識することができない。それで、教えを求める者は、知りたいという望みと信仰の光明とによって、「真理」をめざしてのぼり、知性の目と信仰の瞳とによって、真理の対象を見つめなければならない。
 霊魂は、神的「真理」すなわち神から授かった教えが自分の精神に存することを知り、霊魂の諸状態と涙の実とについて認識したいと願っていたものごとを知る手段は、この神の「真理」以外にないことを知ってからは、果てしなく大きな望みによって、自分自身を乗り越えていた。生きた信仰の光明に照らされたその知性の目は、永遠の「真理」の上に大きく開かれ、そのなかに、願っていたことに関する真理を見、そして認識した。神はこの霊魂にご自分を示された。神の「いつくしみ」は、この霊魂の熱烈な望みに応じられ、その願いに答えられた。

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