9.涙の霊性
第88章
霊魂が祈りによって神と一致することについて。──カタリナの霊魂が脱魂のなかで神に四つの願いをささげたことについて。
すると、甘美な第一の「真理」は語られた。
──いとしいむすめよ、あなたは、涙のいろいろな種類とその実とについて教えを受けたいと願った。わたしはあなたの望みを軽んじなかった。あなたの知性の目をよく開くがよい。そうすれば、あなたに説明した霊魂の種々の状態を通して、恐れから生まれる不完全な涙のあることを示そう。
最初に、邪悪な人々の涙について話したい。それは亡びの涙である。
第二は、恐れの涙である。この涙は、罪に課せられる罰に対する恐れによってしか行動せず、恐れのあまり泣く人々によって流される。
第三は、罪から脱け出てわたしを味わいはじめ、優しく泣き、わたしに仕えはじめる人々の涙である。すでに話したように、かれらの愛は不完全であるために、その涙もまた不完全である。
第四は、隣人に対する完全な愛に達し、自分の利益を少しも考えないでわたしを愛する人々の涙である。この人々も泣くけれども、その涙は完全である。
第五は、第四と結びついている。それは、きわめて優雅に流される甘美な涙である。これについては、もっとくわしく説明したい。
そのうえ、目からあふれ出ない涙、火の涙について話したい。それは、たまたま、泣きたいと望んでも、それができない人々を満足させるためである。
それから、あなたに知ってほしいのは、同じ霊魂が、この種々の状態を経験することができるということである。それというのも、霊魂は、恐れと不完全な愛とから立ちあがって、最後の状態の完全な愛、一致の愛に達することができるからである。
それでは、これから、これらの涙について、説明をはじめたい。