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10.光明と分別

第104章

苦業ではなく、善徳に対する愛が、完徳の土台であり、その主要なあらわれであることについて。

 いとしいむすめよ、わたしは、これまで、二つのことについて話したが、これから第三のことについて話したい。注意して聞いてほしい。もしも、あなたが、悪魔あるいはあなたの無知にわざわいされて、わたしのすべてのしもべを、あなた自身が歩いている道に案内し、かれらがこれを歩むのを見たいと望むことがあるならば、自戒しなければならない。なぜなら、わたしの「真理」から授かった教えに反することになるからである。事実、多くの被造物が厳しい苦業の道を歩むのを見ると、みなにこの道をたどらせたくなり、この道をたどらない者があるときは、いきどおり、つまずいて、その人は間違っていると考えることがしばしばあるものである。しかし、それは大きな誤りであることをわかってほしい。このように、苦業をあまりしないから悪いと見なされる人が、この人を非難する厳格な人よりも、善人であり有徳であることがあるからである。
 すでに話したように、苦業の食卓で食べる人々が、その苦行をまことの謙遜をもっておこなわないならば、そしてまた、かれらの苦業が単なる善徳の手段ではなく、その主要な念慮であるならば、かれらは、しばしば、その非難によって、自分の完徳をさまたげるのである。かれらは、無知から脱け出さなければならない。完徳は、ただ単に、肉体を苦しめ、これを殺すことにあるのではなく、邪悪な我意を殺すことにあることを、理解しなければならない。あなたがたは、この自己放棄と自己の意志のわたしの甘美な意志に対する承服との道を歩きたいと、望まなければならないし、そのうえ、すべての霊魂がこの道を歩くのを望まなければならない。
 これこそ、あの光栄ある光明に照らされた教えである。それで、霊魂は、愛に燃え、わたしの「真理」をまとって、この教えの道を走らなければならない。だからと言って、苦業を軽蔑するわけではない。苦業は、肉体が精神に反抗するとき、これを痛めつけるためであるならば、よいものである。しかし、いとしいむすめよ、これをすべての人の規律と見なしてはならない。なぜなら、すべての人の肉体が同じ体力と体質とをそなえているわけではないからである。ある人の肉体は他の人の肉体よりも強い体質をそなえている。そのうえ、すでに話したように、同じ人の場合でも、しばしは、発生した事情のために、はじめた苦業を中断しなければならないことがある。それで、苦業を、完徳の土台として選んでも、あるいは他人に選ばせても、間もなく、勇気を失い、それと同時に、不完全におちいるにちがいないし、その結果、霊魂は、なぐさめと善徳とを失うにちがいない。
 このように、あなたが愛していた苦業、あなたの土台にしていた苦業を失うと、「わたし」を失ったかのように思うであろう。そして、わたしの「いつくしみ」を失ったと感じて、倦怠、深い悲哀、苦悩、混乱におちいるであろう。こうして、苦業をおこなっていたとき習慣になっていた霊的勤行と熱心な祈りとを、怠るようになるであろう。そして、いろいろな出来事のために苦業を断念しなければならなくなったために、以前には祈りのなかで味わっていた喜びも味わえなくなるであろう。
 このようなことになるのは、まことの現実な善徳に対する熱烈な望みを完徳の土台となすかわりに、苦業に対する愛をその土台にしたからである。苦業だけを原則とした場合、どのような悪結果が生まれるかをわかってほしい。それは、すでに話したように、無知であり、わたしのしもべたちに対する非難であり、倦怠であり、深い苦悩であり、有限な業によってわたしに奉仕しようとする努力である。ところが、無限の「いつくしみ」であるわたしは、あなたがたに無限な望みを要求するのである。
 それゆえ、完徳の土台を、我意を殺し、滅ばすことの上にきずかなければならない。そうすれば、わたしの意志に完全に服従した意志によって、わたしに、心地よく、熱烈で、無限な望みをささげ、わたしの誉れと霊魂の救い以外は、求めなくなるであろう。そのうえ、聖なる望みの食卓で食べ、あなたがた自身においても、隣人においても、つまずきの機会に出会うことがないであろう。万事について喜ぶであろうし、わたしが霊魂をみちびくために用いるさまざまを手段を、有益に利用することができるであろう。
 ところが、わたしの「真理」が与えた教えに従い、心地よくまっすぐな道を歩かない不幸な人々は、反対である。かれらは、見えなくなった病弱な目によって、判断を下し、地上的善も天上的善も失い、狂人のようになって出て行く。かれらは、別のところで話したように、地獄の前味わいをおこなっているのである。

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