< 戻る

目 次

進む >

10.光明と分別

第108章

この霊魂は、謙遜して神に感謝をささげ、全世界のため、とくに聖なる教会の神秘体のため、その霊的子供たちと二人の霊的父とのために祈り、最後に、聖なる教会の聖職者の過失を知りたいと願うことについて。

 すると、この霊魂は、その「創造主」と結んだ愛の一致によって、まことに酔いしれ、われを忘れているように見えた。その肉体の感覚は停止し、その精神は、知性の目による永遠の「真理」の観想によって高くあげられていた。そして、「真理」を認識したことによって、この「真理」に対する愛に燃え、つぎのように申し上げた。
 ──ああ、神の至高かつ永遠の「いつくしみ」よ、このみじめなわたしが、永遠かつ至高の「父」であるあなたに、あなたの「真理」を示していただき、悪魔のひそかな謀略と自分自身の感覚の謀略とを見破らせていただくとは、なんとありがたいことでしょう。わたしと他の人たちとは、この世を遍歴するかぎり、これを避けることができません。すなわち、わたしも他の人たちも、悪魔と自分自身との謀略を避けることができません。ところが、あなたはこれを見破らせてくださったのです。なにが、あなたにそうさせたのでしょうか。愛です。あなたは、わたしから愛されないのに、わたしを愛してくださったのです。ああ、愛の火よ、ありがとうございます。ありがとうございます。ああ、永遠の「父」よ。
 わたしは不完全で、暗黒にとざされています。あなたは完全で、光明にかがやいています。ところが、あなたは、完徳とおん「ひとり子」の教えの光明にかがやく道とを示してくださいました。わたしは死んでいたのに、あなたは復活させてくださいました。わたしは病気でしたのに、あなたはくすりをくださいました。あなたは、人類という病人に、おん「子」によって、「血」のくすりを与えてくださっただけではなく、わたしのかくれた病気に、わたしの知らないくすりをくださいました。すなわち、理性的被造物、とくにあなたのしもべたちを決して裁いてはならないという教えを授けてくだきいました。わたしは、どんなに盲目で病弱だったことでしょう。わたしは、いくたび、あなたの誉れと霊魂の救いとのためという名目のもとに、この人々を裁いたことでしょう。
 ああ、至高かつ永遠な「いつくしみ」よ、あなたの「真理」と、悪魔の謀略とわたし自身の欲情とをしめして、わたしの病弱を認識させてくださいましたことを、感謝申し上げます。あなたの恩寵とあわれみとによって、わたしの迷いが、今日かぎりで、終わりますように、切にお願い申し上げます。こののち、あなたの「いつくしみ」が、わたしとこれに従いたいと望むすべての人とに与えてくだきった教えから離れないようにお守りください.あなたなくしては、なにもすることができません。
 ああ、永遠の「父」よ、わたしはあなたによりたのみ、あなたのもとにかくれます。わたしは、自分のためだけではなく、全世界のために、とくに、聖なる教会の神秘体のために、あなたに哀願します。永遠の「真理」であられるあなたが、みじめなわたしに教えてくださつたこの「真理」、この教えを、あなたの代理者たちのなかに、かがやかせてください。
 わたしはまた、あなたがわたしに与えてくださったすべての人々、わたしが特別に愛している人々、あなたがわたしと一つにしてくださった人々のために、これをお願い申し上げます。もしも、かれらが、この心地よくまっすぐな道を、清らかに、我意と自分自身の感覚とに死に絶え、隣人に対して裁くことも、つまずくことも、つぶやくこともなく、駆けて行くのを見ることができましたら、かれらは、おんみのみ名の誉* 光と賛美となり、わたしの喜びとなるでしょう。ああ、いとも甘美なる愛よ、かれらのうちのだれも、地獄の悪魔の手に奪われることなく、みなが、最後の日に、ああ、永遠の「父」よ、かれらの目的である「あなた」のみもとに到達することできるようにしてください。
 わたしは、もう一つのお祈りを申し上げます。それは、あなたが、この地上で、わたしに与えてくださった二つの支柱、わたしの改心の始めから今日まで、みじめであわれなわたしを守り、教えるためにくださった二人の霊父 (6) のためであります。二人を一つに結んでください。体は二つであっても霊魂は一つにしてください。かれらが、かれらのなかで、あなたがかれらの手のなかに委託した秘義のなかで、そして、霊魂の救いのなかで、あなたのみ名の栄光と賛美とを実現する以外は、なにも念願しないようにしてください。そして、あなたのむすめではなく、卑しくみじめな奴隷であるわたしが、かれらに対して、敬意と聖なる恐れとにより、「あなた」に対する愛のために、わたしの務めを果たし、あなたの誉れ、喜び、慰めとなり、隣人の手本になることができるようにしてください。*誉光: 本PDF 作者によるタイプミスではない。本にもこのようにある。この本には明らかな誤植が数箇所あったので、ここも「栄光」かも知れない。
 ああ、永遠の「真理」よ、あなたは、わたしがあなたにささげる祈りのなかで申し上げる望みを、さげすまれないことを、わたしは確信しています。なぜなら、あなたがわたしにお示しくださったことによって、そして、それにもまして、体験したことによって、あなたが聖なる望みを聞きとどけてくださることを、見ることができ、知ることができたからです。わたしは、いやしいはした女でありますが、あなたからいただく恩寵によって、あなたの掟と教えとを守るよう全力をつくしたいと思います。
 ああ、永遠の「父」よ、わたしは、あなたが聖なる教会の聖職者たちについて話されたとき、わたしにくださった一つのお言葉を、想い起こします。あなたは、今日かれらが犯している過失について、別のところで、もっとくわしく話してくださると、言われました。どうぞ、おん「いつくしみ」によって、なにかをお証しください。わたしは、悲しみと同情とかれらの救いに対する望みの苦悩とを、もっと深く抱くために、耳を傾けたいと思います。なぜなら、わたしは、あなたが教えてくださったこと、すなわち、あなたのしもべたちの苦しみ、涙、悲しみ、汗、祈りによって、慰めを送ってくださるということ、善良で聖なる牧者たちを送って聖なる教会を改革してくださるということを、忘れておりません。この望みを自分のなかにますます深めるために、このようなお願いを申し上げるのでございます。

< 戻る

目 次

進む >

ページに直接に入った方はこちらをクリックして下さい→ フレームページのトップへ
inserted by FC2 system