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訳者あとがき

 シエナの聖カタリナの貴重な著書『対話』(IL DIALOGO)は、聖女が脱魂のあいだに、三人の弟子、すなわち、バルドゥチョ・カニジヤーニ(Barduccio Caniggiani)、ステファノ・マコーニ(Stefano Maconi)、ネリ・パリアレジ(Neri Pagliaresi)に筆記させたもので、マコーニの証言によれば、1378年10月に終了している。
 教皇ピオ二世は、1461年6月28日の聖女列聖の教書『Misericordias Domini』(主のあわれみ)のなかで、「聖女の教えは注賦されたものであって、取得されたものではない」と述べているが、聖女の聴罪司祭の一人バルトロメオ・ドミニチも、ベネチアの列聖調査の席で、「かの女の学問は神ご自身から注賦されたものであった」と証言している。
 『対話』の最初の原文は、現在は存在しない。しかし、三人の弟子のうちの二人、すなわち、バルドゥチョ・カニジヤーニとステファノ・マコーニとの手になる写本が、それぞれ、ローマの Biblioteca Casanatense とシエナの Biblioteca Communale とに残っている。そのうえ、1968年に、ローマの「国立カタリナ研究センター」の所長ジュリアーナ・カヴァリーニ教授の校註によって、バルドゥチョ・カニジアーニの写本によるイタリア語版が発表された。本邦訳は、このイタリア語版を中心とし、その他のイタリア語版、フランス語版、英語版を四種ほど対照しながら、おこなった。
 『対話』は、167章から成っているが、本訳は109章までに止め、110章以下は、種々の事情で割愛し、後日を待つことにした管理人注1。そのうえ、『対話』全体の内容の区分は各版によってまちまちであるが、本訳の区分と表題とは訳者の見解によるものである。また、各章のはじめに載せた概要は、一部のイタリア語版、フランス語版が一致して載せているものである。
 この日本語版『対話』に立派な序文を寄せてくださった、訳者のパリ大学での恩師である著名なカトリック哲学者、アカデミー・フランセーズ会員、ジャン・ギトン博士に深く感謝申し上げたい管理人注2
 最後に、この拙訳『対話』を、聖ドミニコの修道家族のかたがたに、賛美と友情とのしるしとしてささげたい。

1988年4月1日
聖カタリナ女子大学の一室で

岳 野 慶 作

[管理人注1]  省略された110章(CAPITOLO CX)から167章(CAPITOLO CLXVII)までは以下で読める。

伊語版 jesumary.altervista.org archive.org

英訳版では148章(CHAPTER CXLVIII)となっている。しかし内容的には全て(伊語版の167章まで)が収められているようだ。元々これらの章分けは編者が読みやすさのために設けたものに過ぎない。

[管理人注2]  ジャン・ギトン氏による序文は省略した。理由は、あまり感心できないことを言っているから。(PDFには収めましたが)

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