第29

悔悛の秘蹟

 善き告白をするには、必要の条件種々あり。先ず神の戒め、及び自分の務めについて、詳しく糾明せねばならぬ。様々の罪を見て、たとえ小罪に過ぎざるものであっても、これを犯した事を強く残念に思うて、如何に神の威稜に背いたものであるか、如何に斯くまで善良なる神、斯くまで人を愛し給う神に対して忘恩の沙汰であるかを考え、これに由りて己れを軽んじ、己れに対して憤り、こう己れを咎めねばならぬ、「嗚呼、我れは愚かなる者かな、斯く天主に感謝の意を表すから、神は我が父にてましまし、我れは父のものにして、これに無より造られたるにあらずや」と。

 次に神に背いた後悔に再び立ち戻り、言葉を継いで斯く云わねばならぬ、「嗚呼、我れの造り主なり天父なり、救い主たる御方に背きしは禍なるかな。むしろ世の有りとあらゆる困難を、凌ぎし方が増しなりき」と。

 而して神の尊前に恐れ入り、恥じ入り、それでも赦し給わんとの思召しなる事を信頼して、こう申し上げねばならぬ、「嗚呼、父よ、我れは天にも父にも罪を犯せり。我れはもはや御子と呼ばるるに相応ざれば、何卒下僕[しもべ]等の数に入れ給え」と。

 なお神に背いた事を、益々痛悔する心を起し、以後は承諾して再び罪を犯すよりは、むしろ如何なる困難をも、凌ぎたいとの決心を表し、罪を悉く聴罪師に告白して恥じ入り、深く残念がって、最も真実に、己が罪を陳ずる〔=誤魔化す、嘘をつく〕事なく、他人に罪を負わす事なく、白状せねばならぬ。

 告白して後には、斯くまで罪を犯したるに、自らその赦しを受けんとするよりも早く、神はこれを赦さんとし給う事を深く感謝し、これを機会として、ますます斯く善良なる父に背きしを悔み、以後は同じ罪に再び陥らざる決心を立て直し、これが為に神の祐助[たすけ]と聖母マリア、守護の天使、保護の聖人の助力とを願わねばならぬ。

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