第31

貞操に反する悪徳に負けぬよう何を避くべきか

 貞操に反する情慾の奴隷に陥らざる為、避くべきものが種々ある。第一に最も避くべきものは、必ず我等を危険に遇わす人々。第二に避くべきものは、是非交際せねばならぬと云うものでなくして、我等を何かの危険に逢わせ得べき人々。第三に避くべきものは、先ず種々の訪問、手紙の往復、進物、または漠然たる交際。何故と云うに、斯かる交わりは追々危険の交わりに成り変り易いからである。第四に避くべきものは、情慾を含む談話、また凡て情慾を起させ得べき音楽、歌、読書などである。第五に避くべきは、被造物に於て求めんとする所の一般の満足、例えば衣服、家具、美食、また種々の物に依って生ずる満足である。

 これを避くる事を知っている人は少ないが、これを実際に避くる人は一層少ないのである。実は斯くの如き満足は、往々正当なるに相違なけれど、だんだん心を傾けて、快楽を求め、これを熱望するように習わせるのである。それで、感覚的快楽の誘惑が起るや、元より人の心に早く感ずるもので、骨髄に染み込み易いものである。それが起れば、心は容易に克己の道を見出さぬようになるが、これは決して怪しむに足らぬ。心が何時も満足する所を求むるに慣れているから、克己と云う事を僅かしか知らぬのである。

 これに反して、許された満足をも避け慣れている人は、許されぬ快楽の誘惑に抵抗する事が甚だ易く、これを聞くばかりで造作もなく逃げるのである。

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