第5

始終我等の意志について警戒し、
平生如何なる情慾に支配されるかを認むべし

 出来るだけ我れと我が身を省み、平生如何なる情慾が、我が意志を取り込むかを、認むるようにせねばならぬ。何故なれば、無論この情慾は、他の情慾よりもなお迷いに入らしめ、奴隷にならしむるものであるから、元来人間の意志は、何かの情慾に支配せられぬと云う事のないのは、人性の固有[もちまえ]である。人の心に専ら影響する情慾は、左の十一のものである。

 愛、憎、嫌、喜、悲、希望、失望、恐懼、大胆、怒。

 何か自愛より出でて、神の聖意に適わぬ一の情慾の影響を認むれば、努めて我が意を自愛より離れしめ、神を愛する事とその律法及び禁戒を実行する事に帰服せしめねばならぬ。

 斯くすべきは、唯に大罪に導く情慾に対してのみならず、小罪に入らしむる情慾をも、警戒せねばならぬのである、なるほど小罪に導く情慾の刺激は弱くして、少しずつ覚ゆるものなれども、意志の承諾する時には、我等の要する力と元気とを去らしめ、大罪に陥るの危険にも逢わしむるものである。

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